春
――おまえは母さんに似て綺麗だから、きっとすぐにお嫁に行ってしまうんだろうな。
口癖のようにそう言っていた父は、自分が十五になって間もなく他界した。
整備士として配属していた基地が敵の襲撃を受け、死んだのだ。
もう、四年も前になる。
アイラーンは特需景気と言っていたが、ハルにも、死んだ父にも、そんなのはどこ吹く
風という程度だった。
二度目の大戦が始まり、世間は反宇宙への意識から、団結意識が強まっている。街を歩
く多くの人は軍事関係者が多く、ハルの住む大都市は二つの顔を持つようになって久しい。
表は、主要軍港のある歳で、多くの工場や開発機関、軍港を護る基地などもある。
もう一つは裏の顔である。この街は、軍事関係者――主に兵士を客とする売春街でもあ
る。
ハルは生まれてからずっと、この街で育った。
夜空を見上げては、頭上に広がる空を越え、宇宙へ出たいと思った。
母親は自分を生んで間もなく死んだと聞いた。悪い病だったそうだ。そして父も死んだ。
ハルは一人になった。寂しいということを考える間もない日々が始まりだった。
しかし、それも四年も続くと、何かを考える余裕が出てくる。
ハル=ミネキ。その容姿は幼さを十分に残してはいるが、間もなく二十歳の誕生日を迎
えようとしている、十九の女だ。
間もなく、軍港にはパリンの新造艦が完熟航行を終えてくるということと、宇宙への打
ち上げがあるということで、街は賑わいを見せていた。防衛の任で近くの基地に来た兵士
は新兵も多く、客の多くは若い、まだ十五、六か、いっても二十歳前という者が多かった。
もっとも、ハルのいる娼館は安娼館だ。金銭的に余裕のある兵士たちは、もっと良い所
に行くだろう。だから、ハルが相手にする者の半分以上は、まだ女を知らない男たちだっ
た。
