中は半球状になっていて、三メートル四方くらいの広さがある空間だった。その中央に、
  ロッキングチェアのようなシートがある。あれはコクピットシートだ。ハルはそう思い、
  ゆっくりと近づいた。
  近づいてみると、レバーやスイッチ、ペダルのような物がたくさんついている。
  ――これがアームのレバー。このスイッチはモード切替だ。ペダルは……ウイング制御
  と、脚部制御に別れてる。モニターはどこだろう。それに、どうしてこんなに広いんだろ
  う。シートがかなり小さい。これじゃ、男の人は使えないんじゃないかな。あれ、アーム
  のレバーが左右三つずつ。ボタンも多い……。何でだろう。普通のメイフィンとどこか違う。
  ハルはそんなことを思った。客から話を聞くうちに、ハルはメイフィンのコクピットや
  操縦を、ある程度理解してしまっていた。イメージトレーニングという程ではないにしろ、
  何度かコクピットにいる自分を想像し、メイフィンを動かしたこともあった。
  帽子をシートの角にかけてから、座った。グッとよりかかると、やや寝るような姿勢になった。
  足は伸ばさなくても、すべてのペダルに届く。手も、一番リラックスできる位置に、自
  然にレバーが置かれているようだ。
  自分の心臓の音も聞こえないくらい、ハルは何かに緊張した。そして――

  ピピッ――

  短い電子音がすると、コクピット内がパッと明るくなった。
「え?」
  今まで壁だった周囲は、燃えているカーゴを移していた。
「すごい……壁全部がモニターになるんだ!」
  すると次は、ハルの目の前の空間に文字列が流れる。
「……? スタンバイOKって……動けるの? えっと……確か……っ! きゃあっ!」
  今までの中でも、格段に強い衝撃が起こった。ずずっと、このメイフィンが滑っている
  のが感じられる。
「斜めになってるんだ。これじゃ立てないかな……。でも、これって人の形じゃなかった
し……」
  足のペダルを操作してみようとした時、通信が入る。
『おい! アルファランクスに乗っているのは誰だ!』
  声はやたら大きい、男の声だった。
「え……? ハ、ハルです」
『ハル? そんな名前は名簿にないぞ! 所属番号を言え!』
「番号、ありません。わたし、民間人です。でも、今日ここに来て、呼ばれたんです」
『民間人だと! 民間人が登録キーもなしにアルファランクスのハッチを開けるか!』
「でも、わたし、乗ってるんです。動かせそうです、これ」
『や、やめろ! そいつを動かすのは中じゃ無理だ! 今すぐ射出してやる! そいつを
中で動かすな!』
「は、はい!」
  グッと、ハルは歯を食いしばった。
『アルファランクス、装備ノーマルで投下します』
  するとハッチが開き、何かに押し出されるようにして、アルファランクスというその機
  体は空へと放り出された。
「うわ……」
  ふわりという浮遊感と、内蔵が持ち上がるような落下感。自分は今、空を落ちている。
「えっと、飛ばないと落ちちゃう」
  ペダルを軽く踏むと、がちゃりという音がした。
  外では、アルファランクスを覆っていた保護装甲がはがれ、後部ノズルが下に延びる。
  同時に、機体下方から反重力スタビライザーが四本延び、自由落下を止めた。
「すごい! できちゃったみたい!」
  ハルは驚きの表情のまま、ぱんと手をうち鳴らした。
「次は……装備の確認かな……」
  右手側のパネルから、ステータスチェックを呼び出した。
  そこで始めて、ハルは自分の乗っている機体の形を確認することができた。
「これ……変な形」
  それはメイフィンというよりは、小型の戦艦のようなフォルムをしている。中央のシス
  テムモジュールを挟むように、ウェポンユニットがある。楕円を、四角い箱が挟んでいる
  ような形で、後ろ側には物々しい推進モジュールがついている。
「でも、変形、するのかな?」
  ステータス画面には、変形という項目があった。
  操作は知っている。画面に指で触れれば良いのだ。ハルは迷わず、その画面に指先を持
  っていった。


 


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