春
レウールはモニターで、ゆっくりと降下し始めた輸送船を見ていた。
「くそ。遠距離砲は誤算だったか……。この下は海だから……回収は面倒だな。ん?」
斜めになった輸送船のハッチが開き、何かが落とされた。いや、落ちたのだろうか。
「アルファランクス!」
レウールは叫び、モニターに拡大した。
「起動してる……嘘だろ……」
彼女が見ている前で、アルファランクスは保護装甲を脱ぎ捨て、スタビライザーを伸ば
して自由落下を止めた。
「誰が乗ってるんだ! おい機長!」
『俺は知らないぞ! ハルという民間人が勝手に乗り込んでいやがるんだ!』
「ハ、ハル? ……勘弁してくれ。ボクはまだ退役したくないぞ!」
ザムティールは一気に加速し、アルファランクスに近づいた。その途中、アルファラン
クスにまた変化が起きた。
正面のコクピットモジュールを追加装甲が現れて覆い、左右にあったウェポンユニット
からウイングが開いた。そして、下部のスタビライザーの間からは二門の大型粒子砲が現
れる。上部には六連装のミサイルランチャーも出た。
「戦闘モードにしやがった! ハルはわかってやってるのか! おい! ハル!」
『おいハル! 何をしているのかわかってるのか!』
「わかってます。でも、止まらないんです。何か、わたしの体、おかしいんです」
レウールの通信への応対は、不思議と落ち着いていた。ぶぅんぶぅんという、動力炉の
回転音がコクピットに響いている。
ハルは、正面奥に敵を感じた。すると、その感じた部位に赤い輪が被さる。
「自動照準? すごい。わたしの目線に合わせてくれるんだ」
『ハル! 機体を止めろ! 戦闘モードを解除しろ! 訓練なしの女が扱えるメイフィン
じゃないんだぞ!』
「でも、ロックしちゃったんです」
『馬鹿言え! アルファランクスのVGTSが登録もない人間に反応するか!』
「でも、動いているんです!」
『止めろ! これ以上何もするな! 触るな! おまえが死ぬんだぞ!』
「でも、でも……ああ、もう駄目!」
ハルの指が、かけられていたボタンを押した瞬間、アルファランクス側面のビーム砲が
一斉に光を放った。青白いその光線は、先ほど輸送船を攻撃してきたイスタムルの戦艦へ
と、まっすぐに向かっていった。
「あぁ……」
何て綺麗な光なんだろう……ハルはそう思いながら、光の先を目で追う。するとその先
で、爆発が起こった。
撃ったビームは敵艦に直撃し、一撃で轟沈させた。
『……冗談だろう……。重力下で荷電ビームを直撃させるなんて!』
「で、できちゃったんです」
『問題はその後だ! 今のフラッシュでこっちの位置が掴まれてる! ミサイルがくる!
ボクが迎撃してやるから、ハルはじっとして動くなよ!』
「ミサイル、来るんですか?」
『そうだよ。やられてやりかえさない奴は、軍人には向かないんだ! 来るぞ!』
ミサイル艦からはアルファランクスを目掛け、数十発の追尾ミサイルが放たれた。音速
とまではいかないが、かなりの速さでそれは飛んでくる。
ザムティールは両手にFWを持ち、ミサイル群に突っ込んで行く。
