【〇〇一】

 

 女の子と仲良くしたい。というかカノジョが欲しい。
 普通だよな、そういうのって。普通、普通が一番だよ、ホントに。
 中学の頃はなかなかに寂しい生活だったんで、高校に行ったらもう本当に普通の生活ができると思っていた。
 友だちができて、女の子とも仲良くできる、そう思って疑っていなかったのが、一年前の俺。
 高校に入って、二回目の一〇月を迎える頃――いわゆる現実の厳しさってやつに、いい加減恨みを抱きつつあ
る。
 天上突破。「てんじょう」ではなくて「あまがみ」と読む。間違いやすいので注意。ちなみにこれ、何かの標
語でもサブタイトルでもなくて、俺の名前。下の名前は普通に「とっぱ」と読む。まったく、良いセンスしてる
んだかふざけているんだか。
 中学の二年くらいまで、この名前とは無縁なくらいに身長が低かったのだけど、そこから一気に伸び始め、今
では一八〇前半くらいになった。これは良いんだけど、どうやら俺はかなりの悪人顔をしているらしい。これは
大問題。
 この長身と悪人顔のおかげで、初対面の人はだいたいがびびる。落とした物を拾って声をかけると、ほぼ全員
が「す、すいませんでした!」と声を裏返して叫ぶように言うと、脱兎のごとく走り去っていく。男女問わず。
 これには見た目もそうだけど、もっと深刻な問題がつきまとっている。それは俺の二人の姉。姉たちは見た目
こそ、俺のような悪人顔ではなかったらしいのだけど、なんでも伝説とやらを持っている方々だ。
 どこぞの学校に喧嘩を売りに行っただの、職員室で乱闘を起こしただの、挙げ句街の治安を乱すやばい組織の
方々を壊滅させただの――とにかく、ヤンキー漫画の主人公か、もしくは学園バトル漫画の主人公かというよう
な活躍をやっちまってきたのが、俺の姉。
 悪を懲らした正義のヒーローとかいうような噂なら良いのだけど、姉たちのやってきたことは、恐怖による恐
怖の上書きというようなことだったらしく、俺の名字を見るだけで震え出す教師もいるくらいだ。
 その噂に、この容姿。俺は平和を愛する平穏愛好家なんだけど、いつの間にか身に覚えのない伝説がくっつい
てしまっていた。
 姉に仕込まれた殺人術の使い手だとか、中学に入るまでは各国の紛争地域で戦っていただとか、各地には命令
一つでなんでもする無法者集団を従えているだとか、十数人の愛人がいるだとか。

 殺人術? ねーよ! 姉にそれっぽいのをくらっていた方だ!
 紛争地域? どんな小学生だ! ちゃんと日本で小学校通ってたわ!
 無法集団? それは俺の姉二人だ! 言うことなんぞ聞かん!
 愛人? 馬鹿言え! そんなことより今は普通にカノジョが欲しいんだ!


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