「二人の秘密」

 

第1話 -起-(桐生恭丞 編)

 

 その状況はかなり危機的状況下だ。
「もうやめようって――見つかったら……」
「馬鹿ちん。ここまで来てやめられるわけなんて……静かに」
  覗きなんて、生まれて初めてで、しかも――これからの人生を左右してしまうような、

  決定的瞬間を覗き見してしまおうと言うのだ。
  見つかれば、今まで気づき上げてきたものすべてを失うことになる――一瞬で。
  共謀者――というか、この覗き見の首謀者は大した度胸だと思う。嬉々とした顔で、

  この行為を行っているのだから。
  ――楽しそうだ。もしかして、覗き見る物に目的があるのではなく、覗き見るという行為に

  重要性を見いだしていないか!?それでも――制止してしまう自分がいる。
「ホントに見つかって――」
「しっ! 見つかるわけないって。ここで――というか、誰かが覗いてるなんてあちらさんは

想像もできないだろうしね」
「だからって……」
「弱気じゃつまんないじゃない? 先手先手に回らないと。先生だって言ってたでしょうに。

『先回りすることも大事』って」
「どこの先生が?」
「細かいことはいいって」
  その言葉を最後に、二人は息を殺した。
  耳を澄ますと、足音が近付いてくる。
  来た――!
「うわ……」
「しっ! 静かにして――ん、二人来たぞ……」
  と、覗き見えるのは一人だけのようだから、自分は壁に耳を押し当てた。
  あぁ……結局、同罪になってしまうのか……。
「あ」
「静かに――で、なに?」
「あのさ……今さらすごく言いづらいことなんだけど……」
「なに? 早く言いなよ。今のうち」
  どうしよう。こんなことを言ったら怒られそうだけど――。
「やっぱりいいや」
「アホ。先回りすることも大事って言ったろ」
「う、うん……じゃあ聞くけど」
「はいはい、どうぞ」
「えーっとさ……これって、何を覗いてるの?」
「はぁ? 最初に言った――」
「ちょ――声大きいって!」

                                                承へ続く