「二人の秘密」
第2話 -転-(水星野郎 編)
「隠れろよ!馬鹿!!」
勇は俺の頭を強引に押さえつけた。勇の突然の慌てぶりに驚いていると、
「ヴウゥゥゥゥゥ」
とサイレンの音が夜の空を響き渡った。
「逃げるぞ!」
勇は俺の手を引き走り出す。もう無我夢中だった。頭の中は真っ白で、がむしゃらに暗闇の中を
走りぬいた時には、俺達は車の中にいた、運転席の勇は計画実行段階とはまるで別人のように
ただ、一点をみつめていた…。そう計画は失敗に終わったのだ。
今はただ、無事に帰りつけたことだけが救いなのだ、明日になればまた、いつもと変わらない朝が
俺たちの前にもやってくる。そんな当たり前のことがただ救いだった。あの夜の事を忘れそうになる
日常を壊したのは勇が逮捕されるニュースを見た時だった。
「なぜ?どうして?追っても完全に振り切ったのに」
頭にたくさんのクエスチョンが浮かぶ。
「次は俺だ…」
あわてて身支度を始めた時
「ピンポーン」
と呼び鈴がなる。ドアを開けると黒服の男が二人。やはりあの夜のことを調べているようだ、
彼らの質問がくればくるほど、なぜか落ち着きを取り戻してくる自分を感じた。
勇の身辺を調べていてたまたま俺のところにきたんだろう、そう証拠などどこにも残しては
いないのだから…。あれから10年、俺は身の潔白を作り上げ、今では幸せな家庭、そして
社会的地位を築くことに成功した。
あの日、のぞきみたものを俺は売ったのだ。そしてその後には何不自由ない生活、素晴ら
しい自由が俺を待っていた。最高のチャンスを与えそして、犠牲となってくれた勇に感謝し
なければな。
もっとも私に疑惑の残るようなことは極力さけなけばならないので勇とも一度も会わずきりだが…。
仕事も終わり、帰宅の途につく、家では我が子が私の帰りを心待ちにしているだろう。
「ただいま。」
「おかえりパパ。お友達の勇さんがパパのところに遊びに来てるよ。」
「そうか。久しぶりに遊んでやるか…」
