四人が合流したのは、水煌龍が消えるのを見ていた時だった。
「そうか……眠らせられなかったか……」
どこか悲しげに言った穂駆を見て、沙紀が気づいた。
「穂駆、人食べたでしょ」
「あ? わかる?」
「あたりまえでしょ。もう。少しは由香を見習いなさいよ」
「死体喰っても、誰も文句はいわねぇだろ」
道祖神の上に腰掛けていた恵麻が、くすっと笑った。
「ん?」
「かっこよかったよ。食べてる穂駆」
「そいつはどうも。やっぱさ、生き物って本能剥きだしの状態が一番魅力的なんじゃねーのか
な」
と、言っているうちに陽が昇り始めた。
「んじゃ由香、先に帰ってるぜ。やっちまったんだ、しっかり後始末しとけよ」
「ああ」
「行くぞ恵麻」
と、穂駆は恵麻と共に歩いていった。
――彼の言った後始末とは、神を殺した事後処理だ。新たな神の誕生を確認し、承諾せねば
ならない。そんな風習がある。
「付き合う」
「悪いな」
「ううん」
炉端の小さな社。そこに、由香と沙紀は腰掛けている。
「食べたくならない?」
夜明けの風は心地よく、降りてくる冷たい露は甘い。
そんな中、沙紀はそう言ったのだ。
「……おまえをか?」
由香は苦笑しながら言った。
穂駆は男喰い、由香は女喰い。
「うん」
「複雑だ」
「したいって……思う?」
顔をのぞき込みながら、沙紀は聞いてきた。突然だ。
「…………」
由香は無言だった。
意味は、沙紀にはわかった。
「わたしと……」
由香の無言の意味をわかった上で、沙紀はそう付け足した。
すると由香は立ち上がり、沙紀の頭に手を置いた。冷たい手だ。
「ごめん……変な質問だったね」
「ああ」
質問の撤回を聞き、由香は再び腰掛けた。
「オレはもう人は……喰いたくない」
沙紀は由香の背中に被さるように、抱きついた。
「どうして……?」
「胎児ごと喰ったことがある。最低の味だった……」
「……そうなんだ」
沙紀は由香が好きだ。理由はない。これは沙紀と日登美の間では暗黙の了解としているらし
いが、隠し事ができないぶん苦しいはずだ。
沙紀が少し長い由香の髪の毛を撫でていると、社から小型の水煌龍がするすると出てきた。
『……夜の貴族さま……』
「おまえが次の水煌龍か?」
『はい。私で七十三代目となります』
「わかった。承諾する。恵みの雨を降らせてくれ」
『わかりました――』
言って、生まれたばかりの水煌龍は消えた。
沙紀はまだ、抱きついていた。
「由香……」
「なんだ?」
「……フフ、何でもないよ。ね、帰る前にゴハン食べてこ」
「ああ」
笑顔で言って離れる沙紀に、由香も自然な笑顔を返した。
